「生きて出られたら今夜は忘年会だぜ、お前も来やがれHAHAHA」と最年長のばあさんから誘われたりしながら、10人乗りの機体に乗り組む11個の命は無事、粟国島へと着地した。
1個多いとか言ってはいけない。
たいした仕事はしてねぇよ。
といわんばかりのアイランダー。
3ヶ月から70代という編成のチームは到着後にすばやく散開して目的地に向けて進んでゆく。
途中なにやら怪しげなコンテナなんかが落ちている。
鷲だろうか。
何か大切な物資でもしまっているのだろう。
このようなマーキングのコンテナはなかなかない。
最終目的地は島の水道設備とあるので、この施設を確認している暇はない。
指定された時間までに撤収地点まで戻らなければ、おばあの忘年会に、いや、沖縄から離脱することさえできなくなってしまうのだ。
多少道に迷ったりしたのだが、目的地へと続く道を…
立ち入り禁止だと…。
こればかりは、手の施しようがない。
仕方がなく元来た道をテクテクと戻ることにする。
いつの間にか道を間違え、撤収地点とは別の場所についてしまったようだ。
しかし、あの施設はなんだろう。
民家というわけでもなく、あたりには畑があるわけでもない。
何もなくただ原野が広がっているだけだ、限りなく怪しげである。
警戒しながら接近することにする。
すると赤い屋根の脇、不自然な階段があった。
奥まったところは行き止まりであろうか。
にしては手すりが不自然な形で設置されている。
やはり、通路が続いていた。
何かの極秘施設なのだろう、ここまで手の込んだ隠蔽をするとは小癪な真似をする。
後戻りするなどは選択し似ない。
慎重に進むとそこには
いままでいろいろな迷子になってきたが、これは予想を超えた展開である。
洞内に明かりがあるわけでもなく、本気で引き返したほうがいいのではないかと思える。
手元にある懐中電灯は1つ、予備のバッテリーはない。
突入
おびただしく広がる石筍。
高さがあるわけでもないのでかなり怖い。
何といわれても、石筍や石柱には触れてはいけないからだ。
ところどころに電灯は設置されているものの、作動していない。
聞けば200年ほど前に僧侶が住み着いて読経を続けた後なくなったのだそうだ。
洞窟内には石棺も置かれているらしい。
礼拝所にある仏像。
洞窟自体は何十年、何百年という単位ではなく、数万年という時間を経てできたものだろう。
観光地化している大洞窟ではない洞窟があった。
僧侶が住み、現在でもひっそりとお墓参りをする人が居る。
撤収地点へと向かうと、数日ぶりのフェリーが物資を運んできた。
この島にかつて居た人の記憶は今も残り、いまも人が暮らし住んでいることを忘れていない。
たとえ断続的な記録になろうとも、世の中は時間的・空間的につながっていることを感じる。