飛行場めぐり

定期路線のある空港を見て回ってました

バニラエアの謝罪、件の本人に騙されないことを願う

バニラエアがすったもんだの上で奄美空港の一件で謝罪したらしい。
理由は後にするにしても当然だと思う。

ただ、バニラエアの行った謝罪は一般的に認識された謝罪内容とは違うのではないかと思う。

事の発端は車いすごと担いでもらって搭乗しようとした奴がいたということから始まっているようだが、実際のところは奄美空港に到着したあたりで既に事件は始まっているように思う。

この車いすの張本人、
「前もって連絡していたら、診断書を出せと言われたり、根掘り葉掘り聞かれたりして面倒です。連絡をしなかったのは確信犯です」との話で、4回も搭乗拒否をすりぬけたらしい。
また、「事前連絡したら、まず乗れなかったのですよー。設備がないことを理由に全て断っていたんです」と書いているが事実誤認もいいところという感じだ。
バニラエアも「事前に連絡をいただければなんとかする。どうにもならない時はお断りする」という形だったようで、張本人側の都合のいい部分だけを拾って100%搭乗拒否しているかのような勘違をしているだけだ。
(搭乗拒否されたという情報は残っても、ふつうに搭乗出来たら、そんな情報がどこに残るよ)
なにより奄美空港にはJALも就航しているしJACの拠点、空港側に「ちょっと設備貸してよ」といえば大概は貸してくれるのだ…連絡して利用料払えば…。

ところで、
約款上「ある乗客の身体的な状態のために,乗客,乗務員に危険が生じると合理的に判断した場合には,当該乗客の搭乗を拒絶しうる」とあり、
これはIAEAのマニュアルに沿った内容なので、バニラエアだろうが、JALでもANAでも同じ。
この車いすの張本人は搭乗を拒絶しうる状態であることは間違いない。
なので搭乗を拒否されてもあまり文句を言えるものではない。

「事業者における障害を理由とする差別の禁止」というのがうたわれている。
しかし、文章は「事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない」という形になっている。

なので結論は単純だ。
「安全を脅かす身体的な状態の乗客を乗せるのは非合理的である」

なお件の張本人、裁判をちらつかせれば何とかなると言っているが、
「大阪高裁平成20年5月29日判決(『判例時報』2024号20ページ、「特別な援助を必要とする場合」に関する旅客の単独搭乗拒否による損害賠償請求」という裁判があるそうで、
(これも車いす利用者が事前申告をしなかったばっかりに搭乗拒否されたことに対する裁判らしい)
つまるところ、緊急脱出の問題もあり、事前申告があれば、航空会社側が悪いが、事前申告がなかったのだから航空会社側の搭乗拒否判断は合理性を欠いたものとは言えない
という結論のようだ。

バニラエアに「障害者差別禁止法の違反」が該当するとは到底言えません。
バニラエアの謝罪は「往路と復路で対応が分かれてしまった」という事実に対するものではないでしょうか?。
張本人が情報提供義務を怠った段階で、バニラエアは搭乗拒否すべきだったのですから。


ところで、事前に連絡をしたにもかかわらず、(スタッフの勘違いで)ANAでも視覚障碍者を乗せるのを拒否したことがある。
他にも泥酔した乗客や、手荷物に爆弾が入っているという冗談かました人等も容赦なく叩きだしているし、オーバーブッキングで客席が足りないというだけで機外にたたき出された人もいる。
別段障碍者だからといわず、搭乗拒否は時折発生する。