2016年早々、西方にあるとても大切な品物を確認せよとの命令が発せられた。
夜も明けきらぬうちに千葉県都の千葉へと向かう。
もちろんここが目的地ではない、千葉市は最西端ではないのだ。
ここから90分。
千葉県最西端、浜金谷駅。
周辺は漁師町の装い。
しかし、油断はならない、どこに狙撃手が配置されているかわからないのだ。
重要なものはいまだ所在がはっきりしない。
そのため上空をひっきりなしに航空機が飛び交い、多くの人間が山へと向かっている。
こじんまりとした神社である。
千葉県の最高峰、山頂付近まではワイヤーが張ってある。
これを利用する場合は、頂上にある設備の都合で写真を残しておく必要があるらしい。
実にたいそうな警戒体制である。
頂上付近の見張り台から、
なるほど、ここからならば東京湾に出入りする船舶を余さず見張ることができる。
眼下には足元である金谷の市街地。
実はこじんまりと整った城塞都市なのだ。
かなり難しいオペレーションになることは間違いない。
いったん山を下りることにする。
と、その時、
麓で気が付かなかった人工物を発見。
普通であればこの手の脇道を登っていくと存在するのは墓地である。
しかし、鳥居、墓地があるような状況ではない。
先ほどの神社からそう離れてはいないが、その神社の一部とみるには明らかに不自然な構造である。
これはフェイクだ、突入することにする。
一つの瓶。
ごみのようでもある。
が、鉄柵まで囲われており、とても大切な何かという感じもする。
乾坤茶瓶の世。
鋸山の正式名称は「乾坤山」という。
鋸山にある茶瓶の世界。
その世界に1771年からこの中で生き物が活きているらしい、
カラス瓶が本当に200年も前の物か言われると多少の疑問も残るが、ガラス自体は非常に安定した素材なので、200年前と言われても、こんなものかもしれない。
言葉にするのは難しい。
この間、ガラス瓶の中では昆虫が子を産み、茶葉が酸素を供給し続けているのだろう。
200年以上前の空気。
鋸山から見えた薄汚れた現在の大気は異なる空気。
そこでは閉塞された循環サイクルが確立し、これからもそのサイクルが続くことになる。
千葉の片隅、ひっそりと営みを続けている地球がある。